トヨタ・ダイナ 試乗レビュー







エンジンはエルフよりも排気量が1000ccも多いため、よりトルクが太いのかと思いきや、比較的線が細く感じた。もちろん、遅くてイライラするというほどではないのだが、エルフでは時速40キロを下回っても、5速のまま、なにごともなく再加速できた一方で、ダイナはひどくノッキングを起こしていた。一方で高回転側の伸びは、エルフよりもよく感じ、エルフと比較しても、高速型のエンジンだと感じた。エルフのエンジンも、トラック用のディーゼルとしてはよく回ると感じたが、ダイナは3千回転を超えるあたりまで、トルク落ちをほとんど感じなかった。エンジンの振動については、エルフよりも若干ではあるが大きく感じた。走行中は、ほとんどエンジンの振動が伝わってこないエルフに対して、ダイナは多少意識させる程度のものだ。また、停車中のアイドリングでもより振動は多く、先に述べたエンジンのパワー特性を考えても、ストップアンドゴーの多い用途では、ダイナよりもエルフのほうが適しているように感じる。
トランスミッションは5速のマニュアルで、エルフと同様、左上がリバースになっており、基本的に2速発進となるため、便利な配置といえる。ローはエルフよりも高速寄りのようで(調査必要)積載が多い場合など、発進に不安が生じるかもしれない。ギアのストロークはエルフよりも長く、かっちり感もエルフのほうが良好。交差点で減速するときのシフトダウンはかなり渋さがあり、シフトを操作した感じは、エルフのほうがより乗用車の感覚に近い。クラッチのつながりは、大排気量のディーゼル車なので当然、それ相応に良い。
シートはエルフよりもよくできていると思った。調整幅はエルフよりも広く、ふかふかというわけではもちろんないが、長時間乗っていても、お尻や腰は痛くならなかったし、乗り降りもしやすい。さまざまな制約の、最大公約数をついたバランスの良いシートと感じた。また、オルガン式であったエルフと比較しても、足の疲労感は同程度であった。ドライビングポジションは、キャブオーバなりに考えられているようである。
乗り心地は、荷物を積載したときの安定性や耐久性を考慮しているため、エルフと同様かなり固めであった。しかし、路面が荒れたところを通過するときの苦痛さはエルフの3分の2くらいの雰囲気で、かなり低減されている。基本的に上下の動きがエルフよりも小さく、角も取れているので肉体的な疲労はかなり少なく、段差などに対して身構える必要性も、エルフと比べたら格段に少ない。一方でシャシーの剛性はエルフよりも無いようで、前後にぎくしゃくするような動きは、段差などを乗り越えた際に、エルフ以上によく感じた。だが、近年の軽トラックよりは乗り心地が悪いように感じる。
ハンドリングについては、エルフよりも前輪の接地感があるため、思い切ってハンドルを切ることができる。シャシーとキャビンの一体感もエルフより上に感じた。一方で製品個体差か、経年劣化の可能性もあるが、ハンドルの遊びがエルフよりも大きく、カーブを曲がっているときは、エルフ以上に常に舵角の修正を行っていた。接地感はあるにもかかわらず、その遊びのせいで、初期の応答性がよくなく、曲がっているのかまっすぐなのかも非常にあいまい。コーナリングするときは、エルフ以上に気を使った。
高速域でのスタビリティーについてはエルフと同等か、シャシー剛性が若干緩い分、ほんの少し悪いような気がする場面も見受けられた。ただ、私の感覚でぎりぎりわかるかわからないかのところなので、製品個体差か、経年劣化の範囲内ととらえることもできる。安全に走れると感じるのは80キロまでで、普通の人であれば100キロが限界だろう。追い越し車線のペースにはとてもじゃないがついていけない。路面がならされているときはよいのだが、少しでもあれているところがあったり、わだちになっているところを通過するときは、ハンドルが非常に取られやすく、舗装から年数が比較的経過した道路を運転するときは、なかなか車をまっすぐ走らせることはできなかった。
雪道などでのスタック耐性、トラクション性能については、2tトラックは非常に低いと感じる。乗ったことのない人には、意外に感じられるかもしれないが、農業で使用されることを前提とされ、4輪駆動が選べる軽トラックと比較してもかなり良くない。平坦な道でも、後輪のうち片方だけがグリップを失うと、途端にトラクションが全くかからなくなるし、雨や雪の日、上り勾配区間を走るのは非常に高い技術が要る。これは、前回のエルフや、昨年紹介したタイタンでも感じたことだが、今回のダイナではそれがより顕著に感じられた。今回は駐車場などの広い場所で、ほんのりと雪が積もっているところを走行してみたのだが、少しでも雪が積もっていると、たとえ下り勾配でもスタックしかけたときはさすがに焦った。雪道ではチェーンが必須だし、天気の悪い日に、宅配便が届くのが遅れたとしても、文句は絶対に言ってはいけないと思った。

まだ現行の2トン車すべてに乗ったわけでは無いが、生産台数の多い、デュトロとエルフという2大ブランドを短期間の間に乗り比べることはできた。耐久性や実用性、コスト重視の車のため、違いはそれほど多くはないのではと予想していたが、想像していたよりも多くのの相違点を発見できたことがよかった。どちらのほうが優れているのかは、私にはわからない。廃車になるまで地球25周分の距離を走るような使われ方をする中で、耐久性を最も重視すべきだという人にとっては、ハンドリングだとか乗り心地は、重要なポイントではないかもしれない。それでもあえて、個人的に好きだと感じたのは、今回のダイナのほうであった。エンジンはディーゼルなりに気持ちよく回るし、エンジンの音は、エルフよりはうるさいが、低くて唸るような、力強い音で、アクセルをふかしたときにとても楽しい。乗り心地もいくらかましなので、ダイナであれば、必要性はおいておくとして、買い物や通勤など、普段使いレベルならこなせそうだと感じた。一方で、エルフは低速トルクに優れており、ギアもかっちりしていて運転しやすい。直進時も外乱の影響を受けにくいので、トラックという道具として実用性が高いのはエルフのほうかもしれない。いずれにせよ、特に天候や路面が悪いときは、トラックを運転するのは大変だ。日本の物流を支えるトラックに、我々はいままで以上に感謝する必要があるだろう。


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