トヨタ・プリウス(2代目、20系)試乗レビュー








パワートレインについては、3代目の1800ccに対して、1500ccであるため、トルク感や伸びが悪いのではないかと予想していたのだが、意外と体感において違いは感じられなかった。出だしではエンジンを使用しないため、当然静かだが、ある程度アクセルを踏み込むと、現行のプリウスよりもエンジン音が大きく侵入してくるように感じた上に、エンジンの音質も、現行のものより音程が高く、耳障りに感じた。エンジンが1800ccになった理由は、排気量をあげた方がむしろ燃費が良いだとか、エンジン音を低減する目的があったのかもしれない。トヨタ式のハイブリッドは、現行のものであればモーター駆動からエンジンが走行に介入し始めたとき、本当に最細心の注意を払っていなければそれに気づくことはないのだが、今回乗った車では、今まで乗ったトヨタのハイブリッドカーの中では最もショックが大きく感じた。しかし、それでも不快で仕方ないというほどではなく、なんとなく背中に伝わってくるというレベル。基本的に現行のトヨタのハイブリッドと同じく、シームレスに加速していく。個人的には、現行のトヨタのハイブリッドカーよりも荒削りな部分が多いため、むしろエンジンやトランスミッションなどの機械的なところを感じながら運転することができるという意味においては、今のプリウスよりも運転していて楽しいと感じた。
ハンドリングについてはTNGAを採用し、後輪にダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用した、現行50系プリウスと比較してしまうのは流石にかわいそうだなと思ってしまうが、やはり特にワインディングなどでクイックに操作したときは怖いものがある。フロントの剛性は意外と高いものがあるとは感じるものの、車の後ろ側がなかなかついて来ず、少し前のステーションワゴンを運転しているのに近い感覚がある。リアの接地感がとても曖昧なため、高速でコーナーを曲がっていると、リアが破綻してしまうのではないかと不安になってしまう。この車はいまだに地方都市などではタクシーとして使われていることが多く、私自身も乗客として後ろの席に乗る機会は何度かあったのだが、その度に後ろ側の剛性感がない車だと感じていた。今回初めてドライバーとして乗ってみたわけだが、想像していたよりもフロントはしっかりしていたため、後ろの席で感じる印象ほど、不安の多い車ではないと感じた。
高速域でのスタビリティーについては日本の高速道路を法定速度で走るレベルであれば、何も不安はない。新東名の110キロ区間でも、交通の流れについていくことに、何も不安はなかった。矢のようにまっすぐというわけではないものの、この当時はまだ特別感があったハイブリッドだからといって、なにか我慢を強いられるようなものでもなく、高速道路では普通に合流し、普通に車線変更し、普通に巡航できる。この当時の車のレベルとしては充分といっていい。
乗り心地については、今回一番不満が残る点となった。タクシーの乗客として後部座席に乗った時は、常にゆらゆらふわふわした印象だったのだが、これはおそらくタクシー専用モデルでもないのに、過酷な環境で長時間、長期間酷使された結果、足回りがへたってしまったり、後部座席に2人乗車した場合はそのような印象になってしまうのかもしれない。今回感じた印象は、前の席だろうが、後ろの席だろうが、常にハーシュネスがきになり、細かい揺れはコツコツと、大きな揺れは内臓に響くように、どしっと伝わってきてしまう。先に述べたように、ボディーの後ろ側の剛性に難があるため、特に大きな振動を受け止めた際には、ブルブルと車がいつまでも揺れ続ける。足回りもどこか落ち着かない印象で、路面の入力に対して過剰に反応し、タイヤハウスの中で車輪がポンポンと動く感覚が伝わってくる。まるで良いところがないかのような言い方になってしまったが、全体としてみれば、この時代のトヨタの車としては平均的なレベルだといっても良い。最近のトヨタ車は、ようやくまともな乗り心地のものが増えてきたが、10年前くらいのトヨタ車は、耐久性や燃費ばかりを気にしたためか、本当にひどい乗り心地のものが多く、私のように、トヨタの車といえば乗り心地が悪いというステレオタイプをいまだにひきづっている人も少なくないとは思うが、このプリウスはまさに悪しきトヨタ的な乗り心地を現代に伝える車だ。ただ、この時代のトヨタの中で平均的ということは、多くの日本人はこのレベルになれているということでもあるので、中古で安い個体があったとして、乗り心地を理由に買うのを咎めるほどではないというあたりもいじらしい。

初代プリウスがその後20年間の日本車の方向性を形作った車だとするのなら、2代目プリウスはプリウスという車の方向性を定めた偉大なモデルであると言える。空気抵抗低減のために独立したトランクルームを廃止し、卵型のファストバック形状とした点や、上位モデルにも引けを取らない加速感、3ナンバーに拡大したボディーサイズなど、現在のプリウスに通じる要素を確立したのは、2代目プリウスであるといえよう。5ナンバーのノッチバックスタイルを継承したハイブリッドカーは、現在のラインナップではカローラアクシオが該当するが、そういう意味では、初代プリウスの正当な後継者はアクシオであると言えるかもしれない。運転が好きな人があえて選ぶような車ではないかもしれない。ただ、エネルギーを効率よく使い、環境を守るだけでなく、車としての快適性をなるべく損なわないようにしたいという、トヨタの決意がうかがえる1台に仕上がっている。
先日ネットニュースを見ていると、モンゴルの首都、ウランバートルでは大気汚染が深刻化し、政府の補助もあって、日本の中古ハイブリッドカーの需要が高まっているという記事があった。中でも値段が手頃になってきた、この20系プリウスは大人気で、ウランバートルの首都は今20系であふれているらしい。今時、ハイブリッドカーは他のメーカーのものも含めるとたくさんラインナップがあるはずだが、ウランバートルは冬にはマイナス30度を記録する極寒冷地であるため、低温時でも始動することができる、信頼性の高いトヨタのプリウスが好まれているとのことであった。ウランバートルの大気汚染は、自動車の排気ガスが原因というよりは、気候変動によって放牧をすることができなくなった遊牧民が、ウランバートル郊外にゲルを建て、その中で料理をしたり、暖をとったりするときに使用する石炭が主な原因なので、自動車をハイブリッドにしたところで、有効な解決策にはならない気がするのだが、とにかくこのように自然が厳しい地域では、トヨタの車の信頼性が重宝されているようだ。私を含め、自動車雑誌などで、トヨタの車は批判されがちではあるが、やはり究極の信頼性を確立したという意味において、トヨタの功績は大きいし、世界にとって、なくてはならない企業であるということは事実だ。
モンゴル行きを免れ、日本の中古市場に出回っている20系プリウスを見てみると、総額で50万円も出せば、まずまずの走行距離の個体を選ぶことができるようだ。運転が楽しいというわけではないが、信頼性が高く、燃費も良い、3ナンバーである程度居住性もよく、荷物も不満なく詰める上に、1500ccなので税金も安いとくれば、乗り出し50万円ならば充分納得がいくだろう。

給油量84.41L  走行距離1293.1km  今回燃費15.3km/L
詳しい解説はこちらをご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=xmRdBvW85HY&t=11s

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